「なぜ!?」公正証書があっても強制執行ができない意外な理由と解決策
「相手が約束を守ってくれないから、公正証書を使って強制執行しようとしたのに、なぜかできない…」
離婚時の養育費や慰謝料、貸したお金の返済など、様々な約束事を公正証書にしておけば安心だと思っていましたよね。それなのに、いざという時に強制執行ができないと知ったら、途方に暮れてしまうかもしれません。
この記事では、公正証書があっても強制執行ができないケースと、その場合の正しい対処法を分かりやすく解説します。
1. そもそも公正証書と強制執行の関係って?
まず、公正証書と強制執行について簡単におさらいしましょう。
公正証書:公証役場で公証人が作成する公的な書類です。特に、金銭の支払いに関する公正証書には**「強制執行認諾文言」**を付けることで、裁判所の判決を待たずに強制執行ができるという強力な効力があります。
強制執行:相手が約束通りにお金を支払わない場合、裁判所の手続きを通じて、相手の財産(預貯金、給与、不動産など)を差し押さえる法的な手続きのことです。
本来なら、公正証書に強制執行認諾文言があれば、すぐに強制執行の手続きに移れるはず。では、なぜ「できない」という事態が起こるのでしょうか?
2. 公正証書があっても強制執行ができない意外な理由
強制執行ができない主な理由は、以下の2つに集約されます。
理由① 「強制執行認諾文言」が付いていない
これが最も多いケースです。公正証書には様々な種類があり、すべての公正証書に強制執行の効力があるわけではありません。
「〇〇を支払う」という単なる事実だけを記載した公正証書には、強制執行の効力はありません。
**「債務者がこの証書に記載された金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾した」**といった、強制執行を認める文言が記載されていなければ、強制執行はできないのです。
公正証書を作成する際に、この文言が入っているかどうかを必ず確認する必要があります。
理由② 相手の財産が特定できない
強制執行は、差し押さえる財産を具体的に特定しなければなりません。
「〇〇銀行の預貯金」
「〇〇会社から支払われる給与」
「〇〇市〇〇町にある不動産」
のように、相手の財産を特定して裁判所に申し立てる必要があります。しかし、相手の銀行口座が分からない、勤務先が変わってしまった、といった理由で財産が特定できない場合、強制執行を申し立てても手続きが進められず、事実上「できない」状態になってしまいます。
3. 公正証書があっても強制執行ができない時の解決策
もし公正証書に強制執行認諾文言が付いていなかったり、相手の財産が分からなかったりする場合は、以下の方法で対処しましょう。
解決策① 裁判所に訴訟を起こす
強制執行認諾文言がない公正証書しかない場合は、その公正証書を証拠として裁判所に訴訟を起こし、改めて判決を得る必要があります。判決が確定すれば、その判決に基づいて強制執行ができるようになります。
解決策② 財産開示手続を利用する
相手の財産が分からない場合は、裁判所に**「財産開示手続」**の申し立てをすることができます。裁判所の命令で、債務者(相手)に自身の財産を開示させる手続きです。
この手続きによって、相手の財産情報を強制的に引き出すことができ、その情報をもとに改めて強制執行の申し立てをすることができます。
4. まとめ:公正証書は万能ではない!正しい知識で対策を
公正証書は非常に強力なツールですが、万能ではありません。
公正証書を作成する際は、必ず**「強制執行認諾文言」**を含めてもらうように公証人に伝えましょう。
いざという時に備えて、相手の勤務先や銀行口座など、財産に関する情報を控えておくことも重要です。
もし「強制執行ができない」と悩んでいる場合は、諦めずに弁護士などの専門家に相談して、正しい手続きを進めることが、問題解決への近道となります。